伝説のROUTE271梅田本店、行列の記憶と新店「丹青」の現在地

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伝説のROUTE271梅田本店、行列の記憶と新店「丹青」の現在地
伝説のROUTE271梅田本店、行列の記憶と新店「丹青」の現在地
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🎵 伝説のROUTE271梅田本店、行列の記憶と新店「丹青」の現在地

route271 梅田 本店の扉が開くたび、路地へとあふれ出していたのは濃厚な発酵バターの甘みと、異国の香辛料が混じり合う鮮烈な匂いだった。JR大阪駅を背にしてグランフロント大阪の脇を抜けた先、雑居ビルが立ち並ぶ芝田の片隅。わずか数坪の小さな空間をめがけて、平日の昼下がりであろうと容赦なく100人を超える人間が列を成した。かつて大阪の街角で、これほどまでに人を狂わせたベーカリーがあっただろうか。

惜しまれつつもあの熱狂的な日々に区切りをつけたroute271 梅田 本店だが、今なおパン好きたちの間でその軌跡が色あせることはない。ただ空腹を満たすためではなく、あの濃密な一撃を舌に刻み込みたいという純粋な渇望。それは日常の買い物を遥かに超えた、ひとつの巡礼だった。

炎天下でも数時間待ち——グランフロント大阪北側で起きていた狂乱の記憶

照りつける日差しも、骨の髄まで冷える冬の小雨も関係なかった。阪急梅田駅とグランフロント大阪の間を走る細い道路沿いには、常に途切れることのない人間の帯ができていた。警備員が声を張り上げて歩行者の導線を確保し、最後尾の看板を持ったスタッフが申し訳なさそうに待ち時間を告げる。「ただいま2時間半待ちとなっております」。

店内に足を踏み入れられるのは一度にわずか数名。薄暗く落ち着いた照明のなかに、所狭しと並ぶ褐色のパンたち。トレーを持った客は、迷う暇もなく次々とパンを指定していく。迷えば後ろの視線が刺さる。何より、目の前で狙っていた品が消えていく恐怖があった。高槻の住宅街から梅田の激戦区へと移転進出した2015年以降、この場所は文字通り関西のパンカルチャーの震源地であり続けた。

元料理人の奇才・船崎貞弘が惣菜パンに持ち込んだ「レストランの技法」

なぜ、そこまで人々は熱狂したのか。その答えはオーナーシェフである船崎貞弘の異色すぎる経歴にある。船崎は最初からパン職人としてキャリアを築いたわけではない。イタリアンやフレンチの厨房で鍋を振るい、食材の火入れやソースの乳化、重層的なスパイス使いを身体に叩き込んできた元料理人だ。

彼の手にかかると、日本の伝統的な惣菜パンは一瞬にして皿の上のメインディッシュへと昇華した。ただ具材を生地に乗せて焼くのではない。肉の煮込み時間、香味野菜の切り方、酸味の利かせ方、そしてそれを受け止める生地の保水量。フレンチのデグラッセ(旨味の回収)やイタリアンのアッソスタート(香りの抽出)といったレストランの技法が、小さなパンの中にぎっしりと凝縮されていた。

舌を撃ち抜くタイ風焼きそばパンと芳醇なクロワッサン・ア・ラ・クレームの衝撃

看板商品として語り草になっているのが「タイ風焼きそばパン」だ。日本の下町が生んだ定番を、船崎は容赦なく再構築した。自家製パッタイにはナンプラーの深み、豚肉のコク、砕いたナッツの食感、そして容赦ない唐辛子の刺激とフレッシュパクチーの清涼感。これをもっちりとしたソフトなコッペパンで挟み込む。一口かじれば、エスニック料理店の厨房が口の中で爆発するようなインパクトを与えた。

塩気だけではない。甘美なデザートパンの頂点に君臨した「クロワッサン・ア・ラ・クレーム」もまた凄まじかった。極限まで焼き込まれたザクザクのクロワッサン生地に、注文を受けてから絞り込まれる濃密なカスタードと生クリームのブレンド。バターの香ばしい苦味とクリームのリッチな甘みが溶け合い、重厚でありながら一瞬で消える。ROUTE271が提示したのは、パンの形をした「極上の料理」そのものだった。

【独自追跡】ROUTE271梅田本店の終幕から新店舗「丹青」へ至る最新動向

2023年2月、梅田本店は突如としてその歴史に幕を下ろした。連日の大行列による周辺環境への負荷、そして何よりクオリティを維持するために身を削り続ける職人たちの肉体的な限界。妥協を許さない船崎のクラフトマンシップが、一度立ち止まる決断を下させたのは必然だったのかもしれない。

しかし、物語はそこで終わらなかった。船崎は自らの原点である大阪・高槻の地に、完全予約制を中心とした新たなアトリエ「丹青(たんせい)」を立ち上げた。梅田時代の大量生産と狂騒から離れ、自らが本当に作りたいパンと料理の境界線を追求する場だ。

現在の「丹青」では、かつての人気メニューをそのまま並べるのではなく、さらに研ぎ澄まされたコース仕立てのようなパン体験が提供されている。手作業でしか生み出せない水分量の高い生地、炭火を用いた調理、旬の厳選素材。席数や販売数を絞り、一人ひとりの客に深く届けるスタイルへと舵を切った。梅田の喧騒を通り抜けたシェフは今、より純度の高い表現へと向かっている。

食べログ百名店からInstagram現象へ——SNS時代を駆け抜けたブランドの足跡

ROUTE271の躍進は、日本のフードカルチャーにおけるメディアの変遷とも完全に同期していた。食べログでは「パン WEST 百名店」の常連として不動の地位を築き、レビュアーたちの熱量あふれる長文レビューがさらなる食通を呼び寄せた。

同時に、ビジュアルの暴力とも言えるパンの断面はInstagramで爆発的な拡散を見せた。あふれんばかりの具材が詰まった断面写真は、スマートフォン越しに見る者の食欲を直撃した。情報が瞬時に世界へ広がる時代において、確固たる味の裏付けを持つビジュアルは最強の武器となった。国境を越えて訪日観光客が地図アプリを片手に芝田の路地に並んだ光景は、SNSが地方の個店をグローバルな目的地へと変えた象徴的な事例といえる。

日本の製パン業に遺した強烈な遺伝子と職人たちの新たな挑戦

ROUTE271が日本の製パン業に与えた影響は計り知れない。それまで「ベーカリーの片隅にある手軽な軽食」に過ぎなかった惣菜パンの概念を根本から覆し、本格的な料理としての地位を確立した功績は極めて大きい。

船崎の元で修行した若手職人や、その背中を追った全国のベーカーたちが今、各地で自らの哲学を宿した個性派ベーカリーを次々と立ち上げている。料理と製パンのクロスオーバーは、いまや業界のスタンダードな表現手法のひとつとなった。梅田本店という伝説の器は閉じたが、そこで撒かれた情熱の種は、形を変えて日本のパン文化を力強く押し広げ続けている。 (出典: route271 梅田 本店(Yahoo!ニュース)

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