アブに刺されたら放置厳禁!激痛と腫れを防ぐ医師直伝の処置法
アブ 刺され るという突発的なアクシデントは、清流沿いや渓谷での心地よい時間を一瞬で地獄の苦悶へと塗り替えてしまう。針でチクッと突かれるような生易しい刺激ではない。皮膚を鋭利な刃物で削ぎ落とされたかのような鋭い激痛が走り、気づいたときには患部から鮮血がしたたり落ちている。行楽シーズンを迎えた各地の皮膚科外来には、毎年こうした痛ましい被害の報告が絶えない。
たかが虫刺されと軽く見てはならない。野外でのレジャーや渓流釣りを楽しむ最中、アブ 刺され る事態に直面した被害者が適切な初期処置を怠った結果、患部が通常の数倍に腫れ上がり、夜も眠れぬほどの激痛と掻痒感に数週間も苛まれるケースが後を絶たないからだ。傷口の処置スピードが生死や治癒期間を大きく左右する。
アブに刺されたら放置は危険!蜂やブヨとの決定的な違いとは
初夏の山林や水辺で襲いかかる害虫といえば、アブ、ハチ(膜翅目)、そしてブヨ(ブユ科)が代表格だ。しかし、これら三者の攻撃様式と人体に及ぼす病態は全く異なる。ハチ(膜翅目)は尾端の毒針で皮膚を刺し込み、直接毒液を筋肉や皮下に注入する。刺された瞬間の激烈な痛みが特徴だ。これに対し、ブヨ(ブユ科)は皮膚を噛みちぎって吸血するが、体長が1〜5ミリ程度と小さく、吸血時の痛みは比較的鈍い。刺された翌日以降に猛烈な腫れと痒みがピークを迎える。
危険極まりないのがアブの被害だ。アブは体長が20〜30ミリ前後と大型で、噛まれた瞬間に激しい痛みを感じる。出血を伴い、即時型の発赤と数時間から翌日にかけて出現する遅延型の巨大な硬結(しこり)が混在する。放置すると局所の二次感染を引き起こし、蜂窩織炎(ほうかしきえん)へと重症化するリスクが高い。刺された瞬間に「どの昆虫による被害か」を見極め、適切な処置へと舵を切らなければならない。
皮膚を「刺す」のではなく「切り裂く」恐怖!双翅目アブ科の吸血メカニズム
私たちが日常的に「刺された」と表現するアブ(双翅目アブ科)の吸血行動は、医学的・生物学的には「咬傷(こうしょう)」に近い。アブのメスは産卵に必要なタンパク質を得るため、動物の皮膚を大顎と小顎という鋭利な口器を使って物理的に切り裂く。皮膚表面を傷つけて出血させ、溜まった血液をなめ取るように吸血するのだ。
切り裂く際、アブは傷口に特殊な唾液を分泌する。この唾液には、血液の凝固を防ぐ抗凝固成分や血管拡張物質が含まれている。これが人体の免疫細胞を過剰に刺激し、ヒスタミンをはじめとする炎症性メディエーターを一気に放出させる。出血が止まりにくく、激痛のあとに尋常ではない熱感と腫脹が広がるのは、この物理的破壊と化学的刺激の複合作用によるものだ。
激痛と腫れを即座に抑える応急処置!ポイズンリムーバーと冷却の鉄則
被害に遭った直後の数分間が、その後の予後を決定づける。刺されたと気づいたら、間髪を入れずに患部の毒素と唾液成分を体外へ物理的に排出させることが最優先だ。手元にポイズンリムーバーがあれば、患部にカップを垂直に密着させ、陰圧を利用して組織液ごと毒液を吸い出す。指で傷口を強くつまみ、出血とともに絞り出すだけでも効果がある。口で直接吸い出す行為は、口腔内の細菌感染や毒素の粘膜吸収を招くため絶対に避けてほしい。
毒液の排出処置を終えたら、清潔な流水または石鹸水で傷口を徹底的に洗浄する。細菌感染を防ぐと同時に、皮膚表面に残った微細な唾液成分を洗い流すためだ。洗浄後は、保冷剤や氷嚢をタオルで包み、患部をしっかりと冷却する。冷却によって局所の毛細血管が収縮し、炎症成分の拡散を抑え、神経の興奮を鎮めることができる。
市販薬選びの正解は?ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬の使い分け
応急処置を済ませた後は、適切な薬物療法へと移行する。日本皮膚科学会の診療ガイドラインにおいても、虫刺され(昆虫刺咬症)による強い炎症反応に対しては、十分な強さを持つステロイド外用薬の早期塗布が推奨されている。市販の外用薬を選ぶ際は、パッケージに「プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)」など、抗炎症作用の高いアンテドラッグステロイドが配合されているものを選択するのが賢明だ。
耐え難い痒みが全身におよぶ場合や、局所の腫れが熱を帯びて広がる場合は、内服の抗ヒスタミン薬を併用する。抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応を引き起こす受容体をブロックし、痒みの悪循環を断ち切る働きを持つ。掻き壊しによる細菌感染(とびひ)を防止するためにも、我慢せずに内服薬で中枢からの痒みシグナルを抑え込むアプローチが極めて有効となる。
アナフィラキシーショックの兆候を見逃すな!救急医療受診の判断基準
アブの咬傷であっても、体質や過去の曝露歴によってはアナフィラキシーショックを引き起こす恐れがある。ハチ毒ほど頻度は高くないものの、異物タンパクに対する急性アレルギー反応は決してゼロではない。厚生労働省の救急搬送データや医療現場の臨床知見でも、刺傷後30分以内に現れる全身症状への警戒が呼びかけられている。
もし刺された後に、全身の蕁麻疹、まぶたや唇の腫れ、息苦しさ、めまい、血圧低下、激しい腹痛や嘔吐といった症状が現れた場合、局所の処置に拘泥してはならない。迷うことなく119番通報を行い、直ちに救急医療機関へと搬送する判断が求められる。局所の腫れだけであっても、関節をまたいで腫れが広がる場合や、水疱が破れて浸出液が止まらない場合は、速やかに皮膚科専門医の診察を受けるべきだ。
アウトドア・キャンプで身を守る!プロが実践する昆虫刺咬症の完全防備策
川遊びや野営地での被害を未然に防ぐには、相手の生態を知り尽くした装備が欠かせない。アウトドア・キャンプ(野外活動)において、アブは熱、二酸化炭素、そして黒や紺といった暗い色に強く誘引される習性を持つ。真夏のフィールドであっても、黒いウェアは避け、白やライトグレーなどの明るい長袖・長ズボンを着用するのが基本中の基本だ。
一般的なディートやイカリジンを高濃度で配合した防虫スプレーは、露出した皮膚だけでなく衣服の上からも隙間なく噴霧する。さらに、アブが嫌うハッカ油の希釈スプレーを併用するのも実用的なテクニックだ。足首や手首の隙間を塞ぎ、物理的な接触を遮断する。万が一の被弾に備えてポイズンリムーバーとステロイド外用薬をファーストエイドキットに常備しておくことが、過酷な自然を楽しむための最大の防波堤となる。 (出典: アブ 刺され る(Yahoo!ニュース))