コクヨが拓く生活と仕事の新境界!原宿で注目の旗艦拠点を解剖
think of things――原宿駅の竹下口から千駄ヶ谷方面へと線路沿いを抜けた穏やかな路地に、その場所は静かに佇んでいる。ガラス張りのファサードから覗くのは、削ぎ落とされたミニマルな什器と、美しく整列した道具たち、そしてカウンター越しに漂う芳醇な珈琲の香り。創業1905年の文具の巨人が手掛けるこの空間は、単なるショップやカフェという枠組みに到底収まらない。仕事と生活、オンとオフ。その間に横たわっていた境界線を鮮やかに溶かし、訪れる者のクリエイティビティを心地よく刺激する。
オフィス向け用品の代名詞的存在だったコクヨ株式会社が、直営の実験的プラットフォームとしてthink of thingsを立ち上げて以来、街の風景と生活者の道具選びに対する視線は劇的に変わり始めた。無機質なオフィス文具を再定義し、手触りや佇まいに宿る情緒を宿したプロダクトの数々。一歩足を踏み入れれば、日常を愛おしむためのヒントが随所に散りばめられていることに気づく。
仕事と生活の境界を曖昧にする「コクヨの実験精神」
長年、日本のワークスペースを支えてきた老舗企業が、なぜあえて原宿の裏通りでカルチャーの発信に挑むのか。その背景には、コクヨ代表取締役社長の黒田英邦氏が掲げる「WORK & LIFE STYLE COMPANY」への構造的な転換がある。効率や利便性を追い求めるだけでは、人の心は動かない。働くことと生きることは分断されたものではなく、本来シームレスに交錯しているはずだ――そんな確固たる哲学が、THINK OF THINGS 原宿の隅々にまで息づいている。
店内に並ぶアイテムは、既存の流通に乗せるための大量生産品とは一線を画す。インダストリアルな美しさを備えたクリップボード、絶妙なニュアンスカラーをまとったファイルボックス、手に馴染む重量感を計算し尽くしたペントレイ。従来の事務用品が持っていた実用性に、現代の生活空間に調和する美意識を掛け合わせることで、道具は思考を前進させるパートナーへと昇華されている。
2026年の独占取材:進化を遂げた限定アイテムと空間デザインの秘密
現在、THINK OF THINGSはさらなる空間とプロダクトの深化を見せている。今回現地で目にしたのは、都市生活者の流動的な働き方に呼応するように設計された最新のモジュラー式ステーショナリー群だ。金具の噛み合わせ一つから再設計された限定のドキュメントホルダーは、オフィスのデスクからカフェのテラス席、自宅のリビングへと場所を変えても違和感なく風景に溶け込む。
空間デザインの設計思想も極めて秀逸だ。什器には工場で使われるスチールラックや木材パレットの構造美が大胆に転用され、訪れた人が自由に座ってノートを広げられるベンチエリアと展示スペースがシームレスに連続している。さらに見逃せないのが、シーズンごとに刷新される限定カフェメニューの存在だ。自家製のスパイシーなシロップを使ったクラフトソーダや、小腹を満たす一口サイズのコッペパンサンドなど、思考の合間にほどよい糖分と刺激を与えるメニュー構成は、まさに五感を通じてクリエイティブワークを後押しするために綿密に計算されている。
OBSCURA COFFEE ROASTERSとの共鳴が生む、思考を研ぎ澄ます一杯
空間の心地よさを決定づけているのが、三軒茶屋を拠点にスペシャリティコーヒーのカルチャーを牽引するOBSCURA COFFEE ROASTERSとのパートナーシップだ。店内に併設されたコーヒースタンドでは、ハンドドリップで丁寧に抽出されるシングルオリジンや、独自の焙煎プロファイルによるオリジナルブレンドが提供されている。
一口含むと、フルーティーな酸味とクリアな苦味が広がり、ぼんやりとしていた思考の輪郭がすっきりとクリアになっていく。道具を選び、ノートにペンを走らせ、珈琲を味わう。この一連の体験は、飲食・カフェ業界と文具開発が理想的な形で手を取り合ったからこそ生まれた、極上のリズムだ。
キャンパスノートの遺伝子を再解釈する、デザインステーショナリーの地平
コクヨの歴史を象徴するプロダクトといえば、誰もが学生時代に手にしたであろうキャンパスノートに他ならない。THINK OF THINGSでは、この国民的ノートのDNAを受け継ぎながら、大人の探求心をくすぐるデザインステーショナリーとして再構築した限定モデルが異彩を放っている。
罫線のピッチや紙の厚み、表紙の質感に極限までこだわり、図やスケッチを気兼ねなく描ける方眼ノートや、開きやすさを追求した特殊製本モデルなど、プロフェッショナルの思考を邪魔しない工夫が凝らされている。道具が主張しすぎず、使う人の思考を主役に据える。機能性と情緒性の高度なバランスは、文房具の可能性を何段階も押し上げている。
noteとInstagramが映し出す、コミュニティとファンの熱量
THINK OF THINGSの引力は、実店舗の壁を軽やかに越えてデジタル空間にも広がっている。公式Instagramでは、プロダクトの機能説明にとどまらず、朝の光が差し込む机の上の風景や、使い込まれた道具の経年変化が美しいビジュアルとともに切り取られ、感度の高いフォロワーの共感を呼ぶ。
また、note上で発信される開発ストーリーやデザイナーの手記は、モノづくりの裏側にある試行錯誤を赤裸々に伝える読み物として熱狂的な支持を集めている。なぜこの素材を選んだのか、どんな瞬間に使ってほしいのか。言葉を通じてプロダクトの解像度を深める試みが、単なる消費者を「熱心な共創者」へと変えていく。
文房具・オフィス家具業界と飲食の融合が示す、これからのライフスタイルショップ
文房具・オフィス家具業界の雄が仕掛けたこの拠点は、これからのライフスタイルショップがどうあるべきかという問いに対する一つの明快な解答だ。モノを売るだけの店舗が淘汰される時代において、THINK OF THINGSが提示しているのは「生活の質感を整える体験」そのものに他ならない。
一杯の珈琲を片手に、お気に入りのノートを開き、新しいアイデアを書き留める。その何気ないひとときに寄り添う道具と空間がここにある。原宿の隠れ家で繰り広げられるこの静かな実験は、これからも私たちの日常に心地よい刺激を与え続けてくれるはずだ。 (出典: think of things(Yahoo!ニュース))