厩務員の年収格差と給与明細!JRAと地方のリアルな実態に迫る
厩 務 員 年収の実態は、競馬ファンがパドックで目にする華やかな光景の裏側に隠された、もっとも泥臭く生々しい現実のひとつだ。毎週末、数万人の大歓声が地響きのようにスタンドを揺らす。馬体重500キロを超えるサラブレッドの手綱を引き、静かに歩かせる厩務員たち。彼らはただ馬を引いているのではない。一頭の命を背負い、莫大な金額が動く競馬界の最前線で、己の腕と生活を賭けて戦っている。
「外から見れば夢のある職業に見えるかもしれないが、所属する組織や担当馬の走りで生活は激変する」と東西のトレセン関係者は口を揃える。産業構造の二極化が進むいま、厩 務 員 年収の格差はかつてない広がりを見せており、一攫千金を掴む者と過酷な労働に見合わぬ対価に喘ぐ者の境界線が鮮明になりつつある。
JRAと地方競馬で激変する厩務員の年収格差とリアルな給与事情
競走馬の世話を一手に担う厩務員の給与体系は、所属する団体によって天と地ほどの開きがある。最大の分岐点は、日本中央競馬会(JRA)に所属する厩舎で働くか、地方競馬全国協会(NAR)が統括する地方競馬の厩舎で働くかだ。
JRA所属の厩務員の場合、平均年収はおよそ700万〜900万円前後で推移する。基本給に加えて早朝勤務手当、当直手当、競走手当などが手厚く支給され、賞与も安定している。20代の若手であっても年収500万円を超えるケースは珍しくなく、経験を積んだベテランになれば基本給だけで700万円超、担当馬の活躍次第で1000万円の大台を軽々と突破する。
一方、地方競馬の厩務員は大きく異なる現実に直面している。南関東4競馬場(大井・川崎・船橋・浦和)など売上が好調な一部地区を除けば、平均年収は300万〜450万円程度に留まることが多い。地方競馬では1人の厩務員が4頭から6頭もの馬を担当することも珍しくなく、労働量に対して基本給が低く抑えられている厩舎も存在する。同じ「馬の世話をするプロ」でありながら、組織の売上規模とレース賞金の差が、そのまま個人の給与明細に直結している。
年収1000万円超えを左右する「進上金」と重賞ボーナスの内幕
JRAの厩務員が「夢のある高年収」と称される最大の理由は、固定給の高さではなく進上金(賞金配分制度)の存在にある。競馬界には、獲得賞金の一定割合を関係者で分配する明確なルールが敷かれている。
競走馬がレースで獲得した本賞金のうち、馬主が80%を受け取り、調教師が10%、騎手が5%、そして担当厩務員に進上金として5%が配分される(障害競走など一部例外を除く)。この5%という数字が、時に数百万単位の莫大なボーナス化する。
たとえば最高峰の栄誉である東京優駿(日本ダービー)を制覇した場合、1着賞金3億円の5%、すなわち1500万円が一撃で担当厩務員に支払われる。G1競走を年間複数回勝利するような超一流馬を担当すれば、その年だけの進上金で1000万円を優に超え、基本給と合わせた年間総収入が1500万〜2000万円クラスに跳ね上がる。担当馬が勝てるか否か。勝負師としての才覚と運が、年収の桁をダイレクトに変えていく。
東西トレセンで汗を流す現場の日常と過酷な労働サイクル
高収入のチャンスがあるとはいえ、その労働環境は決して生半可なものではない。滋賀県にある栗東トレーニングセンターや茨城県の美浦トレーニングセンターでは、まだ深夜の静寂が残る午前2時半から3時頃に一日が動き出す。
馬房の掃除、寝藁の交換、飼料作り、そして調教への送り出し。気温が氷点下に達する真冬の未明でも、砂塵が舞う猛暑の夏でも、馬の体調管理に一切の妥協は許されない。馬は極めて繊細な生き物であり、わずかな体調変化や脚元の熱感を見逃せば、命に関わる大事故や競走能力の喪失につながる。
世界的な大レースを次々と制覇する矢作芳人調教師をはじめとするトップトレーナーたちの厩舎では、徹底した管理体制とデータ分析、チーム全体での高いプロ意識が求められる。担当馬が競馬場へ遠征すれば、深夜の長距離移動に付き添い、レース直前まで馬のメンタルをケアし続ける。心身を極限まで削るプレッシャーと引き換えに、彼らは給与を得ている。
JRA競馬学校と育成牧場ルートに見るプロへの登竜門
JRAの厩務員になる道は、極めて狭き門として知られる。一般的な会社員のように履歴書を送って面接を受けるだけで採用される世界ではない。必ず千葉県白井市にあるJRA競馬学校の厩務員課程(半年間)を卒業し、資格を取得する必要がある。
しかも競馬学校を受験する資格を得るためだけでも、牧場等での騎乗経験や競走馬の管理経験が必須要件として課される。そのため、多くの志望者は高校や大学を卒業後、まず北海道などの畜産・競走馬育成業の現場へ飛び込み、2〜3年にわたって基礎技術を叩き込む。
育成牧場で若駒のブレーキング(馴致)やハードな坂路調教をこなし、馬を御する確かな技術を身につけた者だけが、倍率の高い競馬学校の門を叩く。入学後も厳しい規律と実技試験をクリアし、厩舎からの内定を取り付けてようやく一人前のスタートラインに立つことができる。
競馬産業の変革とメディア露出がもたらす厩舎スタッフの未来
近年の競馬産業は、インターネット投票の普及やファン層の拡大によって空前の活況を呈している。売上の伸長はレース賞金の増額をもたらし、結果として厩務員へ還元される進上金のパイも確実に拡大した。
さらに情報環境の変化も著しい。国内最大級の競馬情報サイトnetkeibaでは調教助手や厩務員のインタビューが日常的に配信され、専門チャンネルのグリーンチャンネルでは調教風景や厩舎の裏側が詳細に放映されるようになった。
かつては「裏方」として日の目を見ることが少なかった厩務員が、アスリートを育てるプロフェッショナルとして認知され、ファンから名前で応援される時代が訪れている。技術と実績を持つスタッフの市場価値は高まり続けており、優秀な人材には相応の待遇を用意する厩舎経営へとシフトが進んでいる。
未経験から厩務員を目指す人が直面する現実とキャリアの選択肢
乗馬経験が全くない未経験者がこの世界を目指す場合、現実的なキャリア戦略を描くことが不可欠となる。いきなりJRAの厩務員を目指すのは現実的ではないため、まずは民間育成牧場や地方競馬の厩舎で修行を積むルートが王道だ。
地方競馬の厩舎であれば、未経験者を受け入れて一から馬の扱いを指導してくれる受け皿も多い。現場で馬を引く基本、給餌、健康状態の観察を身体で覚えながら、騎乗技術を磨いていく。そこで実績を積み、NARで頭角を現してからJRA競馬学校への挑戦を目指す者もいれば、地方競馬のトップステーブルで重賞馬の担当を目指す者もいる。
生き物を扱う仕事に定休日の概念は通用せず、危険と隣り合わせの毎日が続く。しかし、自分が手塩にかけて育て上げた馬が先頭でゴール板を駆け抜ける瞬間、パドックで観衆の拍手を浴びる瞬間は、他のどんな職業でも味わえない恍惚をもたらす。過酷な労働と引き換えに手にする高い報酬と計り知れない達成感。その両輪こそが、いまも多くの若者をこの険しい道へと駆り立てている。 (出典: 厩 務 員 年収(Yahoo!ニュース))