中国を席巻するウルトラマン熱狂の裏側!円谷プロが仕掛けた大逆転
中国 ウルトラマンという組み合わせに、かつての昭和特撮ファンは驚きを隠せないかもしれない。いま上海や北京の目抜き通りを歩けば、巨大なショッピングモールのエントランスにそびえ立つ光の巨人の立像が視界に飛び込んでくる。玩具売り場にはトレーディングカードやフィギュアを熱心に品定めする子どもたちと、彼らに笑顔で付き添う親たちの群れ。日本で生まれたカルチャーが、海を越えた巨大市場で社会現象と呼ぶべき熱狂を巻き起こしている。
単なる一過性のブームではない。長きにわたり現地で育まれた愛着が、爆発的な経済価値へと昇華された結果だ。実際、現在の中国 ウルトラマン関連市場は数千億円規模へと膨張し、エンタテインメント業界の常識を塗り替えつつある。かつて深刻な権利争いで海外展開を阻まれていた日本の老舗制作プロダクションは、いかにしてこの巨大な大陸で大逆転のシナリオを描き出したのか。その深層を探る。
上海の街角から広がる光の巨人――なぜ今、空前のブームなのか
上海市内のテーマパーク「上海海昌海洋公園」に足を踏み入れると、世界初となる巨大な常設アトラクションエリアが広がる。高さ12メートルを超える巨大な胸像、限定グッズを買い求める長蛇の列、そして週末ごとに満員御礼となる迫力のライブステージ。ここにある熱気は、日本の特撮イベントの熱量をはるかに凌駕するスケールだ。
現地の玩具売り場や文具店を席巻しているのが、現地メーカーと共同展開するコレクションカードである。数百円のパックから飛び出す美麗なホログラムカードが小中学生の間で一大ステータスとなり、SNS上では激レアカードの開封動画が数億回再生を叩き出す。玩具・ホビー大手のバンダイナムコホールディングスも現地仕様のアイテムを積極的に投入し、アジア地域におけるトイホビー事業の強力な牽引役に育て上げた。街の至る所で目にするその存在感は、もはや日本のキャラクターという枠を超え、現地の日常風景に完全に溶け込んでいる。
泥沼の国際著作権裁判の終結と、塚越貴之会長が打った布石
この爆発的な躍進の背景には、20年以上にわたる壮絶な法廷闘争の完全決着があった。かつて海外における初期作品群の利用権を巡り、タイの元実業家側との間で激しい対立が続いていた歴史がある。この問題が足かせとなり、積極的な海外ビジネスは長らく凍結状態を余儀なくされていた。
潮目が完全に変わったのは、米国連邦裁判所における決定的な勝訴判決だ。正当な権利者としての地位を全世界で法的に確定させた円谷プロダクションは、直ちに反転攻勢へと打って出た。舵を取ったのは、経営トップとして改革を主導した塚越貴之氏である。塚越氏は散乱していたライセンスの整理を断行し、グローバル基準のブランドガバナンスを敷き直した。「正当な権利のもとで、最高峰のクリエイティブを届ける」という極めてシンプルな原点回帰が、大陸市場での信頼回復とダイナミックな投資を呼び込む土台となったのだ。
中国で異例のメガヒットを記録するウルトラマン市場の真相と知られざる現地戦略
中国で異例のメガヒットを記録するウルトラマン市場の真相とは何なのか。その核心には、徹底した現地化と緻密に計算されたIPライセンスビジネスの存在がある。
最大の功労者といえるのが、長年にわたり現地パートナーとしてライセンス管理を担ってきた上海新創華文化発展有限公司(SCLA)だ。彼らは日本のコンテンツをそのまま輸出するのではなく、現地消費者の生活動線に合わせた柔軟なタイアップを次々に成立させた。日用品、アパレル、食品、電気自動車に至るまで、生活のあらゆる場面にキャラクターを配置。単なる子どものオモチャではなく、ライフスタイルブランドとしてのポジションを確立させたのである。
配信プラットフォームの選定も極めて戦略的だった。中国最大の動画配信網を誇るテンセントビデオ(騰訊視頻)や、若年層カルチャーの中心地であるBilibili(ビリビリ動画)と強固に連携。過去のアーカイブから最新作までを公式かつ高画質で無料配信し、海賊版を一掃すると同時に、ファンコミュニティの熱狂をデジタル上で爆発させた。テレビ放送の枠組みが失われた時代において、中国のデジタルエコシステムを味方につけたことが、驚異的な収益構造を構築する決め手となった。
『ウルトラマンティガ』世代からZ世代へ――国境を超えた文化受容
中国における人気の土台を築いた決定打は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて現地テレビ局で大々的に放映された『ウルトラマンティガ』である。当時、放課後のテレビにかじりついていた子どもたちは、いまや30代から40代を迎え、家庭を持つ親世代となった。
「ティガは僕たちに光の存在を教えてくれた」。中国のSNSでは今もこのような言葉が熱っぽく語られる。かつて光を信じた少年たちが、自分の子どもと一緒にカードを集め、テーマパークへ足を運ぶ。親子2世代にわたる強固なファン層が形成されたことで、流行り廃りの激しいエンタメ業界において、極めて息の長い強固なIPへと進化した。国境や言語の壁を越え、ヒーローが掲げる普遍的な「愛と勇気、他者への優しさ」というメッセージが、中国社会の心に深く根づいている証左でもある。
『シン・ウルトラマン』からNetflix世界展開、そして特撮ヒーローの新地平へ
日本国内で大ヒットを記録した映画『シン・ウルトラマン』の熱波は、海を越えた中国のシネフィルやクリエイター層にも強烈なインパクトを与えた。CG技術と特撮演出の高度な融合、そして現代的な社会風刺を取り入れた作風は、成熟した大人向けコンテンツとしての可能性を強烈に証明してみせた。
さらに世界規模の動画配信プラットフォームであるNetflixとの共同製作による長編CGアニメーション映画など、グローバル配信を通じた新しいアプローチも中国の若いクリエイティブ層を惹きつけている。特撮の神様と呼ばれた円谷英二監督が昭和の時代に生み出したクラフトマンシップと哲学は、デジタル時代の手法を取り入れながら、現代の特撮ヒーローのあり方を次々と更新している。東アジアから世界へ向けた巨大なクリエイティブの連鎖が、いま正に起きている。
巨大市場で起きている劇的変化の真実――次の飛躍へ向けた布石
巨大市場で巻き起こる変化のスピードは凄まじい。従来のグッズ販売や映像配信にとどまらず、体験型エンタテインメントやメタバース領域、さらには大規模なeスポーツ型カードゲームトーナメントの開催など、事業のフロンティアは急速に拡張を続けている。
かつて権利問題の暗雲に覆われていた日本のIPが、今や東アジアの巨大市場を牽引するフロントランナーとなった。円谷プロが描く戦略は、中国市場での成功モデルを東南アジア、北米、そして世界中へと波及させる次なるステージへと入っている。海を越えて輝きを放ち続ける光の巨人は、国境も文化も軽やかに飛び越え、世界中のファンを魅了し続けるに違いない。 (出典: 中国 ウルトラマン(Yahoo!ニュース))