なぜ山奥に大行列が?AFURI原点の聖地ZUND-BARの秘密
zund barの重厚な扉を開けた瞬間、心地よいジャズのビートと研ぎ澄まされた出汁の芳香が迎えてくれる。都心から車を走らせて小一時間、神奈川の山あいに忽然と姿を現すこの場所こそ、今や国内外で絶大な支持を集めるラーメンブランド「AFURI」の生誕地だ。最寄り駅から直通の公共交通機関が乏しい山奥という立地でありながら、平日の昼下がりですら駐車場には他府県ナンバーの車がずらりと並ぶ。
山間の澄んだ空気とスタイリッシュな空間美が織りなす非日常の中で、多くの食通たちが求めてやまないzund barの魅力はどこにあるのか。単なる人気ラーメン店という枠組みを超え、カルチャーとして定着した理由を解き明かすべく、現地を取材した。
丹沢の天然水が紡ぐ「淡麗系ラーメン」の極みと柚子塩の系譜
一杯の丼に注がれるスープの透明度を見れば、この店が追求してきた美学が直感的に理解できる。ベースを支えているのは、霊峰として名高い阿夫利山(大山)の東麓から湧き出る清冽な天然水だ。ミネラルバランスに優れた軟水を用い、丸鶏や魚介、香味野菜をじっくりと丁寧に炊き出すことで、雑味を極限まで削ぎ落としたスープが完成する。
この出汁に鮮やかな香気をもたらすのが、高知県産の生搾り柚子と厳選された塩のブレンドだ。黄金色に輝く「淡麗系ラーメン」の代名詞とも言える「柚子塩らーめん」は、繊細な旨味の中に柑橘の爽快なキレが走り、最後の一滴まで飲み干さずにはいられない。現在、株式会社AFURIが世界各地で展開するシグネチャーメニューの原風景が、まさにここにある。
創業の地・神奈川県厚木市七沢に今なお行列が絶えない理由
店舗が位置する神奈川県厚木市七沢は、豊かな森林と湯量豊富な温泉郷に囲まれた静寂の里だ。都心の喧騒から遠く離れたこのロケーションこそが、訪れる者に特別な食体験のプロローグを提供する。スマートフォンのGoogle マップを頼りに緑深きワインディングロードを抜け、突如として現れる洗練された外観に誰もが高揚感を覚える。
グルメレビューサイトの食べログでも長年にわたり屈指の高評価を維持し続けており、トレンドの移り変わりが激しい外食市場において、一過性のブームではない不動の地位を確立した。アクセスのハードルそのものがプレミアムな価値へと昇華され、目的地として旅をする「デスティネーション・レストラン」としての求心力を放ち続けている。
異彩を放つ「BARスタイル・ダイナー」という食空間の演出
2001年のオープン当時、山奥に突如として出現したステンレス張りのモダンな建築は、従来のラーメン店のイメージを根本から覆した。無機質でインダストリアルな質感と、周囲の深い緑が鮮烈なコントラストを描く。店内にはバーカウンターが堂々と据えられ、ダウンライトが落とされたシックな照明設計が施されている。
この「BARスタイル・ダイナー」というハイブリッドな空間演出は、ZUND-BARが打ち立てた最も革新的なコンセプトの一つだ。酒とアペタイザーをゆったりと楽しんだ後に極上の一杯を啜る。ラーメンをファストフードから「夜の時間を贅沢に過ごすためのディナー」へと昇華させた空間設計の妙が、世代や性別を問わず人を惹きつけてやまない。
創業者・中村比呂人が仕掛けた外食産業・飲食業界への挑戦
この独創的な世界観を生み出したのが、株式会社AFURIの創業者である中村比呂人氏だ。氏が手掛けたアプローチは、当時の外食産業・飲食業界において極めて型破りなものだった。「山奥で、バーのような空間で、最高品質の淡麗ラーメンを出す」という逆転の発想は、業界の常識をことごとく覆した。
素材のトレーサビリティを重んじ、化学調味料に頼らない本物の味を追求するクラフトマンシップと、洗練されたデザインセンスの融合。中村氏が提示したこのビジネスモデルは、日本のラーメンカルチャーの価値基準そのものを一段高いステージへと押し上げた。
【2026年最新】名物「柚子塩らーめん」の秘密と限定デザート・混雑回避の裏ワザ
常に進化を続ける厨房では、名物「柚子塩らーめん」においても更なるブラッシュアップが重ねられている。自家製の全粒粉入り極細ストレート麺は、小麦本来の豊かな風味がスープの芳醇さと見事に調和。香ばしく炙られたチャーシューのスモーキーな風味が重なり、奥行きのある立体的な味わいを生み出す。
そして、ここを訪れたなら絶対に外せないのが、専属パティシエが手掛ける限定デザートだ。季節の果実を使った自家製ソフトクリームやタルトは、ラーメン店のサイドメニューの領域を遥かに超越した本格的なクオリティを誇る。これらを目当てに足を運ぶリピーターも後を絶たない。
連日賑わいを見せる同店だが、ストレスなく入店するためのスマートな混雑回避ルートも存在する。週末のピークタイム(12時〜14時半)を避け、開店直後の午前中、あるいは夕方16時前後のアイドルタイムを狙うのが鉄則だ。近年導入されたデジタル順番待ちシステムを活用すれば、待ち時間中に七沢の豊かな自然や近隣の足湯を散策しながら、ゆったりと極上の一杯を待つことができる。
世界へ羽ばたくAFURIのDNAが呼吸する唯一無二の現在地
北米やアジア、欧州へとグローバルに展開を広げるAFURIだが、そのすべての精神的支柱は七沢の地にある。自然の恵みを受け、本質的な旨味を追求する姿勢は、創業から四半世紀近くが経過した現在も少しもブレていない。
山の息吹を感じながら味わう黄金色のスープ。それは、都会の喧騒を離れてわざわざ訪れた者だけに与えられる至福の体験だ。七沢の森の奥深く、静かに湯気を上げるその厨房から、日本の食文化の新たな可能性が今も発信され続けている。 (出典: zund bar(Yahoo!ニュース))