昭和天皇を唸らせた東京三大豆大福の頂点、松島屋の塩餡と入手術
松島屋 豆 大福を手に入れるため、朝の澄んだ空気のなか高輪の緩やかな坂を登る。開店前から漂う香ばしい蒸気と、路地に伸びる静かな行列。創業は大正7年(1918年)。100年以上の歳月を超えてなお、甘党のみならず普段和菓子を口にしない左党までも虜にし続ける傑作がここにある。
飾り気のない木製ショーケースの向こうで、職人たちが一つひとつ粉を払いながら手際よく包んでいく。多くのファンが熱烈に求める松島屋 豆 大福の魅力は、砂糖の甘さに逃げない、キリッと効いた塩気と力強い小豆の風味だ。和菓子業界において孤高の存在感を放つこの餅菓子を、最新の取材データとともに紐解く。
高輪の路地に伸びる長蛇の列:昭和天皇も愛した名店の歴史と現在地
都営浅草線・京急線の泉岳寺駅から歩いて5分ほど。閑静な住宅街が広がる港区高輪の角地に、木造の趣ある店構えを残す松島屋がある。赤穂義士ゆかりの泉岳寺のすぐそばで、大正、昭和、平成、令和と時代の変遷を見つめ続けてきた老舗だ。
この店の豆大福を語る上で欠かせない逸話がある。昭和天皇が皇太子時代からその味をこよなく愛し、宮内庁御用達の栄誉に浴したという事実だ。特別な儀礼用の菓子としてではなく、日常の茶請けとして愛されたという背景が、この大福の飾らない本質を物語っている。現在も界隈のセレブリティから近隣の住民、全国から訪れる甘味愛好家まで、客足が途絶える気配はまったくない。
護国寺「群林堂」・原宿「瑞穂」と並ぶ東京三大豆大福の圧倒的個性
東京の和菓子文化を語る際、必ず引き合いに出されるのが「東京三大豆大福」の称号だ。音羽・護国寺の「群林堂」、原宿の「瑞穂」、そして高輪の「松島屋」。この三軒はそれぞれ全く異なる美学を持つ。
豆の圧倒的な存在感と力強い赤えんどうが主役の群林堂、きめ細やかで滑らかな厚手の餅と極上のこし餡が調和する瑞穂。これらに対し、松島屋のアイデンティティは「薄皮の餅」「ゴロゴロとした赤えんどう豆の食感」、そして「エッジの効いた粒餡の塩気」の三位一体にある。伝統を守りながらも現代の洗練された味覚に響くそのバランスは、和菓子業界の職人たちからも一目置かれている。
塩味と小豆の旨味が炸裂する:職人技が宿る塩餡と赤えんどう豆の解剖
松島屋の豆大福を口に運んだ瞬間、まず舌を打つのは明確な塩味だ。甘さを引き立てるための単なる隠し味ではない。小豆本来の持つ大地の滋味をダイレクトに引き出す、計算し尽くされた塩分濃度である。
北海道十勝産の厳選小豆を丁寧に炊き上げた粒餡は、瑞々しさを残しながらも程よく水分が飛ばされ、豆の粒感がしっかりと感じられる仕上がり。外側を包む餅は極めて薄く、赤えんどう豆が外から浮き彫りになるほどだ。塩茹でされた赤えんどう豆は硬すぎず柔らかすぎず、噛みしめるとホクホクとした弾力とともに心地よい渋みと塩気を放つ。添加物を一切使用しない無垢な餅生地だからこそ、素材同士の鮮烈な対話が生まれる。
【2026年最新】午前中で完売?売り切れ時間の目安と当日予約の裏技
確実に手に入れるためには、事前の戦略が不可欠だ。現在でも午前中に完売することが日常茶飯事となっており、特に週末や祝日は開店からわずか1〜2時間でショーケースが空になるケースが目立つ。
最新の販売動向を見ると、平日は11時30分から13時前後、土曜日は11時前後に完売するパターンが多い。確実に購入するための黄金ルートは「事前電話予約」だ。数週間前から受け付けており、受取時間を指定すれば取り置きが可能となる。
もし事前予約を逃して当日購入を狙うなら、裏技がある。店舗の営業開始は午前9時30分だが、電話回線は朝8時過ぎから繋がることが多い。開店直前の朝一番に電話を入れて当日分の取り置き可否を確認するか、あるいは開店30分前の午前9時には店頭に並ぶこと。予約分とは別に当日店頭販売枠が確保されているため、朝の早い段階であれば手に入る確率は格段に跳ね上がる。
メディアが絶賛し続ける理由:dancyuや食べログ百名店、孤独のグルメでの評価
食通向けグルメ雑誌『dancyu』の和菓子特集における常連であり、『食べログ百名店』のスイーツ部門・和菓子部門でも長年にわたり選出され続けている松島屋。さらに人気ドラマ・漫画『孤独のグルメ』をはじめとする数多のカルチャーメディアでも取り上げられ、その知名度は世代や国境を越えて広がりを見せる。
メディアが松島屋を賞賛し続ける理由は明快だ。ブームに迎合して生産規模を拡大したり、日持ちを伸ばすための保存料に頼ったりすることなく、大正時代から続く「当日の朝に搗き、その日のうちに売り切る」という実直な職人基準を頑なに貫いているからだ。過剰な装飾を削ぎ落とした先にある本物の美味しさが、評論家やフードライターたちの心を掴んで離さない。
実食レポート:薄皮餅とゴロゴロ豆が織りなす究極のテクスチャー
手に取ると、ずっしりとした重みが手のひらに伝わる。表面にまぶされた打ち粉の奥から、黒々とした大粒の赤えんどう豆が覗く。薄い餅の皮は驚くほど柔らかく、指先が吸い付くようだ。
ひと口頬張る。薄皮の餅がすっと切れ、中からみっちりと詰まった粒餡が溢れ出す。瞬時に広がるのは、豊かな小豆の風味とキリッとした塩の輪郭。甘ったるさは微塵もない。赤えんどう豆のしっかりとした歯ごたえが絶妙なリズムを生み、噛むごとに甘みと塩味が交互に押し寄せる。
賞味期限は当日限り。夕方を過ぎると餅は少しずつ締まり始めるが、それこそが本物の餅である証拠だ。もし固くなってしまったら、オーブントースターで表面を軽く炙ると香ばしさが立ちのぼり、また別の至福が訪れる。一切の妥協を排して作られるこの一個には、東京の菓子文化が誇る粋と職人の誇りが凝縮されている。 (出典: 松島屋 豆 大福(Yahoo!ニュース))