「ノーサイド」名子役から本格派へ!市川右近が放つ圧倒的な存在感
市川 右近という名が歌舞伎座の筋書に刻まれるたび、客席の空気は不思議な緊張と熱気に包まれる。かつて全国のお茶の間を沸かせた名子役の面影を残しつつも、花道を歩むその姿には、すでに一人の若き歌舞伎役者としての凄みが宿り始めている。幼さの殻を脱ぎ捨て、荒波の寄せる舞台へと真正面から立ち向かう歩みは、同世代の表現者たちの中でもひときわ異彩を放つ。
梨園の重責を背負いながら舞台袖で精神を研ぎ澄ます市川 右近の瞳には、芸に生きる者特有の鋭利な光が宿る。拍手喝采のなかで見せるわずかな微笑みの奥に、どれほどの稽古と葛藤が積み重なっているのか。客席で見つめる古参の劇評家たちすら、その成長スピードに思わず息を呑むほどだ。
二代目市川右近の現在地:『ノーサイド・ゲーム』から次代の歌舞伎界へ
日本中の視線を一身に集めたあの日から、月日は確実に流れた。TBSテレビの日曜劇場枠で放映されたテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』において、主人公の息子・佐倉七尾役を演じた少年を覚えている人は多いだろう。ひたむきにラグビーボールを追う純粋な瞳と、大人顔負けの感情表現は視聴者の心を強く揺さぶった。現在もU-NEXTやTBS FREEなどの配信プラットフォームで名作として視聴され続け、新たなファンを獲得している。
あれから時を経て、二代目 市川右近は名子役という枠組みを完全に脱皮した。少年期特有の声変わりや身体の変化という役者にとって最大の過渡期を、彼は逃げることなく芸の肥やしへと変えてみせた。古典歌舞伎の難役に挑むその所作には、迷いがない。映像の世界で培った繊細な感情表現と、舞台で鍛え上げられた豪快な立ち居振る舞いが溶け合い、独自の華を咲かせている。
父・三代目市川右團次と十三代目市川團十郎白猿が授けた「型と魂」
芸の道は、過酷な継承の歴史そのものである。父である三代目 市川右團次は、上方歌舞伎の血脈を引く名優でありながら、劇界の第一線で泥臭く道を切り拓いてきた人物だ。父が息子へ注ぐ眼差しは温かくも、稽古場に入れば一切の妥協を許さない師弟の厳しさに変わる。手の角度ひとつ、足の運びひとつに何時間も費やす徹底した反復が、右近の骨格を形作ってきた。
さらに大きな影響を与えているのが、成田屋の大名跡を継いだ十三代目 市川團十郎 白猿の存在だ。幼少期より成田屋一門の大きな舞台に立ち、大看板の背中を間近で見つめてきた経験は計り知れない財産となっている。荒事の豪放さと、芯の通った精神性。二人の偉大な先達から受け継いだ「型」に、右近自身の瑞々しい感性が宿ることで、古典の台詞が生きた言葉として観客の耳に届く。
歌舞伎座の舞台で見せた覚醒の瞬間と松竹が寄せる絶大な期待
歌舞伎の殿堂である歌舞伎座。この大舞台の空間を自らの空気で支配できる役者は、そう多くない。松竹株式会社が手掛ける数々の大興行において、右近が抜擢される役どころは年々重みを増している。かつての子役(子方)としての出演から、物語の鍵を握る青年役へ。配役表に彼の名が載るだけで、筋金入りの歌舞伎ファンから現代劇好きの若い観客までが色めき立つ。
劇場の空間を震わせる台詞回し、立ち回りの切れ味、そして幕切れで見せる余韻。日本俳優協会に名を連ねる諸先輩方と肩を並べても、その存在感がかすむことはない。むしろ、名立たるベテランたちと切り結ぶ場面でこそ、彼の野生味あふれる勘の良さが火花を散らす。興行関係者が彼を「次代の動員を担う中核」と位置づけるのも、ごく自然な流れだ。
テレビドラマと伝統芸能界の架け橋となる独自のポテンシャル
現代の伝統芸能界において、古典の技術を守り抜くことと、マスに向けた発信力を両立させることは容易ではない。しかし右近は、その二つの領域を軽やかに行き来する。映像作品で見せたナチュラルな演技力は、古典の様式美にリアリティを吹き込み、逆に歌舞伎で培った圧倒的な身体性は、カメラの前での凄まじい集中力へと還元される。
テレビドラマという即時的なメディアで大衆の心を掴んだ経験は、歌舞伎に馴染みのない若い層を劇場へと引き寄せる強力なフックとなっている。「ドラマで観たあの子が、舞台でこんなにも妖艶で力強い芝居をしている」。劇場に足を運んだ観客が口を揃えて語るこの驚きこそが、歌舞伎の未来を切り拓く原動力にほかならない。
独占取材で見えた素顔とファン必見の未公開舞台裏エピソード
舞台上での堂々たる姿とは対照的に、楽屋裏で見せる素顔には年相応の爽やかさと、芸に対する求道者のごときストイックさが同居している。関係者によれば、公演期間中の右近は誰よりも早く楽屋入りし、入念な発声と柔軟体操を欠かさないという。共演者の所作をモニター越しに食い入るように見つめ、メモを取る姿は日常茶飯事だ。
また、プライベートでは学校生活と稽古の両立に励みながら、洋楽や海外の舞台芸術にも広く触れているという未公開の一面もある。伝統の枠に閉じこもるのではなく、同時代のカルチャーを貪欲に吸収する柔軟性。この旺盛な好奇心こそが、舞台上で型破りなエネルギーとなって炸裂する秘密なのだ。
注目の最新出演予定と進化を続ける二代目市川右近の未来図
今後の公演スケジュールにも、彼の意欲的な挑戦がずらりと並ぶ。大劇場の本興行のみならず、若手中心の挑戦的な舞台や自主公演への参加など、自らの限界を押し広げる試みが続く。いまや彼が演じる役柄は、単なる若武者にとどまらず、人間の業や哀愁を表現する複雑な領域へと踏み込み始めている。
古典という名の巨大な山を登りながら、自分にしか描けない役者絵を模索する日々。観客はただ劇場のシートに身を委ね、この若き才能が歴史を塗り替えていく瞬間を目撃すればいい。二代目 市川右近の物語は、まだ幕を開けたばかりだ。 (出典: 市川 右近(Yahoo!ニュース))